高解像度衛星データを用いた津波の被災状況把握の可能性を調べることを目的として、2004年12月26日発生したスマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波で大きな被害を被ったインドネシア・バンダアチェの津波の被災状況の把握を試みました。
バンダアチェは、インドネシア共和国スマトラ島の北西部に位置する人口約26万人の都市で、アチェ州の州都です。バンダアチェ南方の×印がスマトラ島沖大規模地震の震央です。
被災後のQuickBird衛星データを用いて、目視により津波の到達した範囲(津波浸水限界範囲)を抽出しました。加えて、その中でも被害の規模が大きい範囲(津波重大被災限界範囲)も抽出しました。範囲については下図に示すとおりです。
この画像はQuickBird衛星データからホームページ用にリサンプリングした画像です。
この画像はQuickBird衛星データからホームページ用にリサンプリングした画像です。
上図の中央に位置するバンダアチェの市街地(画像では青白く表現されています)のほぼ全域に津波が到達していることが明らかになりました。その中でも強い勢力を持った津波が海岸付近の養殖池(海岸から内陸2km付近までに位置する暗緑色の部分)を越えて市街地にまで及んでおり、大きな被害をもたらしたことが判ります。また、図の右端の津波浸水限界線にあるように、津波が直線的な川を相当遡っていた様子もうかがえます。なお、津波到達範囲の把握方法は以下のとおりです。
津波到達範囲の把握方法の概要
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被災前のQuickBird衛星データを用いて、自動分類により土地利用分類図を作成しました。
下図では、津波浸水限界線と津波重大被災限界線を重ね合わせました。
市街地は図の中央部に位置し、海岸沿いには養殖池が集中しています。また、市街地を取り囲むように森林や農地・草地が分布しています。津波浸水限界線と津波重大被災限界線を重ね合わせることで、どのような土地利用が被害にあったのか判断できます。
| 土地利用分類項目 | 全範囲の面積(km2) | 津波浸水限界範囲の面積(km2) | 津波浸水限界範囲の割合(%) | 津波重大被災限界範囲の面積(km2) | 津波重大被災限界範囲の割合(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 市街地 | 8.47 | 6.32 | 74 | 3.34 | 39 |
| 海・河川 | 2.89 | 2.6 | 89 | 1.95 | 67 |
| 養殖池・水田 | 10.72 | 10.69 | 99 | 10.65 | 99 |
| 森林 | 14.6 | 6.52 | 44 | 4.7 | 32 |
| 農地・草地 | 37.69 | 20.97 | 55 | 13.12 | 34 |
| その他 | 10.63 | 7.83 | 6.23 | ||
| 雲・雲影 | 3.29 | 0.04 | 0 | ||
| 計 | 88.29 | 54.97 | 39.99 |
面積を集計することにより土地利用分類項目ごとの被害の規模が判ります。結果として、海岸に近い所に分布する養殖池・水田のほとんど全てが浸水したこと、市街地全体の74%が津波浸水限界範囲に、39%が津波重大被災限界範囲に含まれることが判りました。内陸に位置する森林や農地・草地は津波の被災が及んだ割合が比較的小さいことも判りました。
被災前のLandsat衛星データを用いて、目視により土地条件分類図を作成しました。
バンダアチェ周辺は三角州や後背低地・氾濫源等が卓越しており、低平な地形であることがうかがえます。海岸沿いには1~3列の砂州・砂堆があり、その間は後背低地となっています。その内陸には三角州が分布しており、バンダアチェ市街も三角州上に立地しています。三角州の中に現在の河道と旧河道がへび状に分布しており、バンダアチェ市街を流れる川の上流には、自然堤防も発達しています。なお、バンダアチェ市街地付近では建物等により津波がブロックされることで津波の到達距離が幾分短くなっていることが推定されます。逆に旧河道付近では到達距離がやや伸びている傾向も判りました。
| 地形分類項目 | 全範囲の面積(km2) | 津波浸水限界範囲の面積(km2) | 津波浸水限界範囲の割合(%) | 津波重大被災限界範囲の面積(km2) | 津波重大被災限界範囲の割合(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 水部 | 4.53 | 4.28 | 94 | 3.98 | 87 |
| 三角州 | 50.87 | 26.21 | 51 | 14.34 | 28 |
| 砂州・砂堆 | 5.99 | 5.9 | 98 | 5.73 | 95 |
| 後背低地・氾濫源 | 18.04 | 15.84 | 87 | 14.89 | 82 |
| 河道 | 2.53 | 1.57 | 62 | 0.77 | 30 |
| 自然堤防 | 3.14 | 0.01 | 0 | 0 | 0 |
| 海岸平野 | 0.68 | 0.67 | 98 | 0.11 | 16 |
| 湖岸平野 | 0.29 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 山地 | 1.72 | 0.12 | 6 | 0.03 | 1 |
| 河川 | 0.23 | 0.23 | 100 | 0 | 0 |
| 丘陵地 | 0.27 | 0.16 | 59 | 0.15 | 55 |
| 計 | 88.29 | 54.99 | 40 |
今回の津波の場合、その津波の営力が海岸線に平行的に2km以上にわたり及んでいます。海岸付近で卓越する後背低地・氾濫源全体の87%が津波浸水限界範囲に、82%が津波重大被災限界範囲に、砂州・砂堆全体の98%が津波浸水限界範囲に、95%が津波重大被災限界範囲に含まれることが判り、そのほとんどが浸水した様子となっています。一方で、内陸に位置する自然堤防は、津波の被害を被っていないことが判ります。
バンダアチェの市街地を中心とする5km×5kmのテストエリアを対象として、被災範囲の建物戸数を推定しました。まず、テストエリア内を0.5km×0.5kmのメッシュに分割し、建物の密集度に応じてメッシュを4つに類型化しました。次いで4つの類型のうち、典型的と思われるメッシュの建物戸数をカウントすることで1メッシュあたりの建物戸数を算出し、メッシュ数と掛け合わせることでテストエリア全体の建物戸数を推定しました。

結果として、被害にあった建物戸数を状況別に推定することができます。バンダアチェの市街地を中心とする5km×5kmのテストエリア内では、津波浸水限界範囲は約14,000戸、津波重大被災限界範囲は約8,700戸と推定されました。