治水地形分類図は、治水対策を進めることを目的に、国が管理する河川の流域のうち平野部を対象として、扇状地、自然堤防、旧河道、後背低地などの詳細な地形分類及び河川工作物等が盛り込まれた地図です。
治水地形分類図は、治水地形分類調査の成果として作成されました。治水地形分類調査は、河川堤防の立地する地盤条件を包括的に把握し、さらに詳細な地点調査を行うための基礎資料を得ること、および氾濫域の土地の性状とその変化の過程や地盤高などを明らかにすることを目的として、昭和51年度から昭和53年度にかけて実施された調査です。昭和51年の台風17号による長良川の破堤で大きな被害を受けたのを契機として、堤防の安全性の再確認を行う気運が高まったことを背景として実施されました。
このように治水対策を目的として整備された治水地形分類図ですが、地形分類項目のハザードマップへの応用や地盤調査の基礎資料等への利用の有効性等、広く一般の利用にも応えるため、平成17年8月から公開しています。
また、昭和50年代初めに作成されて以降、既に30年以上経過していることから、その内容を見直し更新する作業に、平成19年度から着手(本格着手は平成21年度)しており、更新した治水地形分類図についても、順次、公開しています。
治水地形分類図には作成当時の河川工作物や堤防の整備状況等が表現されていますが、現況と異なる可能性がありますので、ご利用の際はご注意ください。
治水地形分類図には、地形分類や河川工作物などが記載されています。地形分類は、洪水と関連の深い微地形を分類して示しており、洪水の危険性の定性的な把握に用いることができます。近年、全国の直轄河川や海岸沿いでは航空レーザ測量による「数値地図5mメッシュ(標高)」がつくられており、これと併用することにより微地形の起伏も明瞭に把握できます。
下図は、長野市街の南部を流れる信濃川水系、千曲川本流と犀川の合流部の治水地形分類図です。
図の南西部から北東方向に向かって千曲川本流が流れています。また、図の上部を西から東に向かって犀川が流れ、比較的傾斜が緩やかな扇状地が広がっており、旧流路跡や流下した土砂による微高地などが分布しています。この扇状地の上には、長野市および同市川中島町や真島町などの市街地があります。犀川の扇状地に狭められた千曲川本流付近の平野には川が大きく蛇行を繰り返した跡が見られ、現在の堤防に守られている内側の低地にも、かつての流路である旧河道が分布しています。
図では、低地は、扇状地(A)、氾濫平野(B)、微高地(自然堤防を含む、C)、旧河道(D)に区分されています。
扇状地は、山地と低地の中間にあることから、低地より勾配が急で、山地からの出水がその表面を流下するときに浸水するおそれがあり、湛水深、湛水時間とも小さいが、土石流や土砂流による著しい堆積や侵食の被害を受ける場合があります。
氾濫平野は、河川の氾濫により形成され、主に水田に利用されていて洪水被害を比較的受けやすく、建物の立地には注意が必要です。
自然堤防は、地盤高線から読み取れるように氾濫平野より相対的に地盤が高く、比較的洪水の被害を受けにくいため、古くから集落や畑に利用されており、建物の立地に適しているといえます。
旧河道は、相対的に地盤が低く、現在は主に水田に利用されていますが、比較的洪水の被害を受けやすく、一般には地下水位が高いことから地盤も軟弱であるため、建物を建設する際には注意が必要です。
なお、平成19年度から着手している更新作業においては、国土地理院がこれまで作成してきた地形図(旧版地形図)から抽出した河川の流路(旧流路、E)を表示しており、明治以降の河川の流路の変遷を知ることができます。
このように治水地形分類図を読み取ることで、河川による地形の形成過程を調べ、洪水や地盤災害に対する危険性が定性的に把握でき、インフラ施設、建物の建設や開発計画、防災計画の策定の際に参考にすることができます。
治水地形分類図の複製図の頒布サービスを(財)日本地図センターが行っております。販売価格は消費税込みで1枚2,400円です。