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東海豪雨災害緊急調査報告
東海豪雨災害に際し、国土地理院地理調査部と中部地方測量部(名古屋)は合同で緊急水害調査を実施しました。特に被害が顕著だった名古屋市西区、西枇杷島町、新川町、清洲町を中心に水害調査結果をとりまとめました。
降雨状況
- 沖縄付近に停滞した台風14号の影響による湿った南風が、本州上の秋雨前線に吹き込み、東海地方に豪雨をもたらした。
- 名古屋市の降水量は、9月10日夜から12日午前11時にかけて562mm、また11日の24時間降水量でも428mmと過去最大であった。同市の年平均降水量は1535mmなので、その約3分の1がこの間に降ったことになる。
- また、名古屋市の11日、午後7時6分までの1時間降水量は97mmを記録した。
被害の状況
- この豪雨は名古屋市と周辺の市町村をはじめ、岐阜県、三重県などにも被害をもたらした。
- 名古屋市周辺では、新川の西区あし原町左岸で堤防が決壊した。洪水流は西区の西南部と下流側の西枇杷島町全域を水没させた(写真-1[109KB]、写真-2)。
- 庄内川は名古屋市中川区下之一色町で右岸側に溢れた。
- 同市南東部の天白川でも、河水が溢れるとともに内水氾濫も加わり、2m以上の浸水深を記録した(写真-3)。
- このほか、名古屋市内及び周辺市町村のいたるところで内水氾濫を発生させた。
緊急調査の目的
浸水被害の状況を把握し、被害と地形の関係について検討する。
調査の方法
建物の壁や塀、電柱等に付着した泥水などの筋及び漂流物の痕跡から、浸水範囲と最大浸水深を現地で確認(9月15日16日)するとともに、空中写真判読により浸水範囲を把握した。また可能な場合は聞き取り調査も併せて行った。
調査の範囲
空中写真の入手できた新川と庄内川にはさまれた西枇杷島町と名古屋市西区の一部、新川右岸の新
川町、清洲町、名古屋市西区のそれぞれ一部について実施した。
使用した空中写真
- 撮影計画機関:建設省中部地方建設局庄内川工事事務所(中日本航空株式会社撮影)
- 西枇杷島地区、縮尺5000分1、9月13日午前11時30分~12時頃撮影
調査地域の地形概要
- 新川は庄内川の北側から西側にかけて、庄内川に沿って流れ、調査地域周辺では、五条川、水場川、鴨田川、合瀬川、大山川を北から、新地蔵川を東から合流させ、それに加え庄内川の洪水を洗堰付近の越流堤から導入する人工の河川である。
- また、水場川と鴨田川は低地の中央を流れる排水路である。
- 名鉄名古屋本線の南側に線路と平行して、五条川左岸と庄内川右岸をつなぐ自然堤防がみられる。その標高は西枇杷島町内で4~5mである。
- 五条川の両岸(清洲町付近)には、比較的大規模に自然堤防及び旧河道が発達する。
- 西枇杷島町、新川町付近は、庄内川、新川、五条川が合流又は近接し、元来内水が集まりやすい地形条件であるほか、前述の自然堤防帯の微高地帯が、内水の自然排水を妨げるような配列となっている。
- 被災地付近の土地条件図[145KB]
調査結果
新川左岸地域
- (新川左岸)名古屋市西区あし原町で新川左岸の堤防が決壊し、西枇杷島町のほぼ全域と、名古屋市西区の南西部で浸水した(写真-1[109KB])。
- 流入した濁流は、下流側では前述した自然堤防に堰き止められ、南西の中河原、下河原地区には流入しなかった(写真-4[76KB])。
- しかし、中河原の一部では、下水道を通して他地域の氾濫水が流れ込み、マンホールから水が噴き出し浸水した。
- 破堤地点から下流側では、浸水深が最大200~220cmであった。現地調査の時点では水は完全に引いていたが、空中写真撮影時にはまだ大部分水につかっていた。浸水状況図にはこの部分を青色で表示した。
- 浸水域の北限はほぼ標高4m程度に判読されたが、それより上流もある程度内水による氾濫があったと推定され、限界線は明瞭ではない。
- 新川沿いに比べ、庄内川側は浸水をまぬがれたり、水の引きが早かったりしている。これは庄内川の自然堤防であって、標高がまわりよりやや高くなっているためである。
新川右岸地域
- 新川右岸では破堤はなかったが、内水氾濫等によって広範囲に浸水した。
- 13日の時点では新川と五条川の合流点付近に湛水しており、上流で降った雨が流れ込み、排水が困難なために残ったものと考えられる。
- 環状2号線(国道302号)より南の調査範囲では、工場敷地と自然堤防の一部を除いてほとんど浸水した。浸水深は大きいところでも100cmを少し越える程度であった。
- 環状2号線の北では浸水深は数10cm程度で空中写真の撮影範囲の制約から浸水域の北限はおさえられなかった。
- 水場川では浮野町の団地の北側で稲の穂が上流側へ倒れており、用排水路等に沿って下流側から水が逆流したと考えられる。
浸水状況図
新川右岸及び五条川流域地域の浸水域は、一部を除いて空中写真が撮影されていないこと、また調査日数が限られていたことから、今回の調査では浸水域の全体を把握することはできなかった。従って本図で浸水域として彩色していない部分(界線が入っていない部分)でも浸水している可能性はある。
拡大図[256KB]
現地写真
おわりに
今後は、浸水と地形や土地利用との関係等についてさらに解析を進めるとともに、水害調査のマニュアルづくりにこの調査の経験を生かしていきたいと考えている。
更新日:2000.9.26
作成者:地理調査部防災地理課
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