鳥取県西部地震緊急調査報告

もくじ

  1. 地震及び被害の概要
  2. 地震に対する国土地理院の対応
  3. 現地調査期間及び編成、調査範囲
  4. 液状化被害調査結果
    1. 調査地域の地形概要
    2. 液状化被害状況
    3. 主な地域の状況
    4. 液状化調査結果のまとめ
  5. 地震断層等調査結果
    1. 調査地域の地形概要
    2. 地震断層
    3. 崩壊・地すべり
    4. 家屋等の損壊
(項目をクリックすると記載にジャンプします)
調査地域
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1.地震及び被害の概要

平成12年10月6日13時30分頃、鳥取県米子市南方を震源とするM7.3、震源の深さ約10km(震央位置:北緯35.3度、東経133.4度)の地震が発生し、鳥取県境港市、日野町で震度6強、西伯町、溝口町、会見町、淀江町、岸本町で震度6弱、米子市、島根県安来市、仁多町、宍道町などで震度5強を観測するなど、中国地方を中心に西日本の広い範囲で強い揺れを感じた。

震源に近い山間地の日野町や溝口町、島根県伯太町などでは、家屋の損壊や崖崩れが多数発生し、道路、鉄道など交通網やライフラインにも大きな被害をもたらした。

また、境港市や米子市、島根県八束町などでは、家屋の損壊に加えて臨海部の埋立地や干拓地で地盤の液状化が広範囲で発生し、流通・港湾・漁業施設、農地や農業施設などに甚大な被害が発生した。

この地震では死者こそでなかったものの、島根、鳥取両県下では、合わせて107名の負傷者と841棟の家屋の全半壊被害を出した(10月13日現在、鳥取県災害対策本部及び島根県消防防災課による)。


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2.地震に対する国土地理院の対応

国土地理院では、測地部、測地観測センター及び地理地殻活動研究センターがGPS連続観測によりこの地震に伴う地殻変動をとらえ、地震断層の運動を解明するとともに、干渉SARを用いて地殻変動図を作成した。

また、測図部が緊急空中写真撮影を実施し、被災直後の空中写真を広く一般に提供するとともに、地理調査部が液状化調査班、地震断層等調査班からなる地形学的な緊急災害調査を行った。


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3.現地調査期間及び編成、調査範囲

液状化調査班
  1. 調査期日:10月12日~13日
  2. 編成
    国土地理院
地震断層等調査班
  1. 調査期日:10月11日13日
  2. 編成
    国土地理院
    広島大学
調査範囲

液状化調査班は、美保湾及び中海周辺臨海部の埋立地並びに干拓地を中心に調査し、噴砂や地盤の亀裂、陥没などの地盤変形、土木構造物などの被害状況について現地確認を行った。写真判読による面的調査は、図-1の空中写真緊急撮影範囲について行った。したがって、中海の南岸や西岸については、現地調査によるスポット的な確認のみである。

地震断層等調査班は、鳥取県日野町、西伯町、溝口町を中心に調査し、地震断層を捜索するとともに崩壊や地滑り家屋の被害状況などについて現地確認を行った。

調査範囲図

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4.液状化被害調査結果

(1)調査地域の地形概要

米子市から境港市に伸びる弓ヶ浜半島は、幅3~4km、長さ約16~17kmにおよぶ長大な砂州で、東の日野川から供給される土砂が沿岸流によって運搬・堆積され形成されたものである。

弓ヶ浜半島を構成する砂州は、米子市付近では、全体が南広がりの扇形で3列(美保湾側から外浜、中浜、内浜と呼称)確認できる。

米子市の旧市街が立地するのは、このうちの内浜である。半島中央部では、砂州列が収斂して砂州間低地(後背低地)が不明瞭になるが、境港市付近では北広がりの扇形に小規模な砂州が多数分布しており、再び砂州列及び砂州間低地の地形が明瞭になる。

これらの砂州上には、部分的に砂丘が形成されていたが、開発等によりほとんど削られてしまい、現在はごく一部を残すのみである。

中海の南岸一帯は、飯梨川流域が扇状地性の低地であるほかは、宍道湖と中海を結ぶ大橋川付近をはじめ、大部分の地域は三角州性の低地(泥質)である。

中海には大根島、江島の2つの島があり、いずれも火山性の地形(溶岩台地)で地盤は安定している。

本地域の臨海部では埋立や干拓が盛んに行われ、境港市の竹内団地や昭和町、米子市の旗ヶ崎や崎津、和田浜、錦海、八束町の江島などで工業団地や住宅団地の造成が行われた。特に、中海では、近年、大規模干拓が行われ、境港市の弓浜干拓地、米子市の彦名干拓地などが造成されたほか、中海干拓本庄工区の施工が続いていたが、最近の公共事業見直しの機運により、干拓事業の中止が検討されている。


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(2)液状化被害状況
埋立地の抽出
5万分1地形図の旧版図(明治33年測図「美保関」「米子」「境」「松江」)を使用して、埋立地や干拓地の範囲を抽出した。
液状化現象等
噴砂による堆砂域(泥水流出域)が空中写真で判読できた部分を、噴砂として表示した。

干拓地等において、噴砂は発生していないが、明らかに液状化により地下水が上昇し、地盤が暗灰~暗褐色に変色している箇所も多く見られるが、本図には表示していない。


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(3)主な地域の状況

にカーソルを置くと地区名が出て、クリックするとその地区の記載にジャンプします。

主な地域の状況の索引図 境港市竹内団地 境港市昭和町 江島工業団地 弓浜干拓地及び米子空港 彦名干拓地 安倍彦名団地、旗ヶ崎、米子港 錦海団地 安来市穂日島町 安来市恵乃島町 安来市亀島町・潮美町 東出雲町錦浜干拓地 松江市富士見町 大根島~松江市大海崎町に至る干拓堤防上の道路

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境港市竹内団地(埋立地)
液状化被害調査図(竹内団地)
竹内団地の南域 空中写真-1 竹内団地の南域

縁石の抜け上がり 写真-1 縁石の抜け上がり

駐車場舗装面の陥没 写真-2 駐車場舗装面の陥没

外周道路の亀裂と段差 写真-3 外周道路の亀裂と段差

大きな噴砂口 写真-4 大きな噴砂口

噴砂による堆砂状況 写真-5 噴砂による堆砂状況

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境港市昭和町(埋立地)
液状化被害調査図(昭和町)
大きな亀裂が入った4万トン岸壁 空中写真-2 大きな亀裂が入った4万トン岸壁

大きな亀裂が入った4万トン岸壁 空中写真-3 海側にはらみだしたカニかご岸壁

抜けあがった上屋の支柱 写真-6 抜けあがった上屋の支柱

はらみだしたカニかご岸壁と倒壊寸前の上屋 写真-7 はらみだしたカニかご岸壁と倒壊寸前の上屋

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境港市外江町、島根県八束町・江島工業団地(埋立地)
液状化被害調査図(外江町及び江島工業団地)
工業団地内の橋部分の抜け上がり 写真-8 工業団地内の橋部分の抜け上がり

堤外地の高水敷にできた大きな噴砂口と亀裂、段差 写真-9 堤外地の高水敷にできた大きな噴砂口と亀裂、段差

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境港市弓浜干拓地及び米子空港
液状化被害調査図(弓浜干拓地及び米子空港)
管渠部の抜け上がり 写真-10 管渠部の抜け上がり

排水路よう壁の損壊 写真-11 排水路よう壁の損壊

大根畑での噴砂と亀裂、段差 写真-12 大根畑での噴砂と亀裂、段差

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米子市彦名干拓地
液状化被害調査図(彦名干拓地)
彦名干拓地西部 空中写真-4 彦名干拓地西部

道路の陥没と亀裂 写真-13 道路の陥没と亀裂

畑内の巨大な噴砂口と亀裂 写真-14 畑内の巨大な噴砂口と亀裂

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米子市安倍彦名団地、旗ヶ崎、米子港(埋立地)
液状化被害調査図(安倍彦名団地、旗ヶ崎、米子港)
団地横の排水路よう壁の倒壊と歩道の陥没 写真-15 団地横の排水路よう壁の倒壊と歩道の陥没

護岸部の抜け上がり 写真-16 護岸部の抜け上がり

米子港岸壁の陥没 写真-17 米子港岸壁の陥没

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米子市錦海団地(埋立地)
縁石の損壊 写真-18 縁石の損壊

団地内通路の亀裂と陥没 写真-19 団地内通路の亀裂と陥没

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安来市穂日島町(干拓地)

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安来市恵乃島町(埋立地)
道路の陥没 写真-20 道路の陥没

護岸の損壊 写真-21 護岸の損壊

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安来市亀島町・潮美町(埋立地)
巨大な噴砂口 写真-22 巨大な噴砂口
ここから吹き出した砂は、周囲20メートルにもわたって飛散している。

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東出雲町錦浜干拓地
堤外地での噴砂と陥没 写真-23 堤外地での噴砂と陥没

排水路中での噴砂跡 写真-24 排水路中での噴砂跡

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松江市富士見町(埋立地)

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八束町(大根島)~松江市大海崎町に至る干拓堤防上の道路(埋立地)

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(4)液状化調査結果のまとめ

本調査地域における液状化発生の著しい地域は、埋立地または干拓地とほぼ一致し、特に境港市では竹内団地や昭和町の埋立地、中海の弓浜干拓地並びに米子市では、崎津や旗ヶ崎、米子港付近、錦海団地などの埋立地及び彦名干拓地などが大きな被害を受けた。

中海の南岸~西岸では、被災後撮影された空中写真が無いため、点的な調査しかできていないが、現地を回った結果、ところどころで噴砂や道路の亀裂がみられるものの、広範囲には液状化は起きていないと思われ、西に行くほどその痕跡は少ない。

米子市から境港市に伸びる砂州上では、ほとんど液状化の痕跡は確認できなかった。米子空港ターミナルの西付近とJR中浜駅西付近にまとまってみられるのみである。この付近は砂州間の低地の部分で、比較的地下水位が高かったものと考えられる。


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5.地震断層等調査結果

(1)調査地域の地形概要
鳥取県内陸部

鳥取県の内陸部は、面積のほとんどを占める山地とわずかな谷底平野、河岸段丘からなる。山地のほとんどは風化した花崗岩からなるが、溝口町中祖のように安山岩が分布している場所もある。

谷底平野、河岸段丘は礫層からなり、地盤は比較的良好である。また、地下水位も低いことから液状化はほとんどみられなかった。しかし、震源に近く、激しい地震動に見舞われた結果、山地斜面の崩壊や家屋の損壊がいたる所で生じた。崩壊は鳥取県溝口町中祖や鳥取県日野町の根雨から黒坂にかけての地域に多発し、一時は国道180号線を初めとする多くの道路やJR伯備線を不通にした。


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(2)地震断層

地震断層については、2.で述べたようにGPS等の解析によってモデル化されたが、地表には、兵庫県南部地震の際の野島断層のように誰が見ても地震断層といえる規模のものは出現しなかった。

しかし、西伯町笹畑(ささばた)を初めとするいくつかの地点で地表に亀裂が生じ、その中には、断層モデルと同じ挙動(左ずれ)を示したものがみられた。これらが、地震断層が地表に現れたものであるかどうかについては、今後のトレンチ等の精査を待ちたい。ただし、島根県伯太町須山付近から鳥取県日野町黒坂・下榎付近にかけて、北北西から南南東方向の直線状に被害の激しい地域が連なっており、兵庫県南部地震の際にも言われた「震災の帯」が生じている。この震災の帯は、余震分布域や推定された地震断層モデルの位置とほぼ重なる。


笹畑(ささばた)クラックの詳細マップ 笹畑(ささばた)クラックの詳細マップ

笹畑亀裂 写真-25 笹畑亀裂

笹畑亀裂アップ 写真-26 笹畑亀裂アップ

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(3)崩壊・地すべり

最も多く発生したのは、日野町久住や三谷で起こったような風化花崗岩よりなる山地斜面の表層崩壊であったが、溝口町中祖では安山岩からなるキャップロックの崩落もみられた。

西伯町法勝寺では法勝寺中学校グランドの盛土地で地すべりが発生した。


久住崩壊 写真-27 久住崩壊

三谷土砂崩れ 写真-28 三谷土砂崩れ

中祖崩落岩塊 写真-29 中祖崩落岩塊

法勝寺地すべり 写真-30 法勝寺地すべり

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(4)家屋等の損壊

「震災の帯」を中心に家屋の損壊や墓石、神社の鳥居などの倒壊が多発した。家屋の損壊は日野町下榎と黒坂で特に著しかった。

このほか、橋梁の抜け上がりやよう壁のはらみだし、道路の亀裂、すべりなどは枚挙にいとまがないほど多数発生した。


下榎損壊家屋 写真-31 下榎損壊家屋

笹畑墓石倒壊 写真-32 笹畑墓石倒壊

黒坂損壊家屋 写真-33 黒坂損壊家屋

上長田神社被災状況 写真-34 上長田神社被災状況

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更新日:2000.12.4
作成者:地理調査部防災地理課

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